奇跡の絆
奇跡の絆

発行者:神谷 陵人
価格:324円(税込)
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2012/08/09
最終更新日:2012/07/31 18:42

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奇跡の絆 第1章 第一章 唐突な出会い
崇は七海のすぐ後ろまでくると一度立ち止まった。

悠樹が言うように、本当に耳が聞こえないのか。本当に倉石 七海という女なのかを確かめるために。

「倉石 七海。」

大声でなく、囁くようでもなく、崇は目の前にいる人間に普通に話しかけるトーンで声をかけた。

七海は驚いて振り返る。そこには昨日の男性が立っていた。

『昨日の・・。』

小さいが、崇にはやはりはっきり聞こえた。

「お前、耳が聞こえないって本当か?」

崇は躊躇なく、言葉も選ばずに質問をぶつけた。七海は少し困った表情を浮かべたが、真っ直ぐに崇を見つめて答えた。

『本当だよ。』

あまりにもあっさり答えが返ってきた崇は、自分が質問したにも関わらず、動揺してしまう。

「聞こえてるじゃないか。」

『うん。』

「どういうことだよ!」

訳が分からない、崇は声を荒げる。

『わからない。どういうわけかあなたの声だけは聞こえるの。そしてあなただけが私の声を聞くことが出来てる。』

「俺だけが・・?」

『うん。私の唇動いてないでしょ?実際に声を出してるわけじゃないの。もちろん腹話術なんてできないよ。心の中であなたに話しかけてるだけ。』

七海の言うとおり、これだけ会話をしていても七海の唇はまったく動いていない。

崇は何がなんだかわからず、頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。

しかし、七海の顔をみていると、不思議とそのモヤモヤしたものが徐々に無くなっていくのを感じた。

しばらくの沈黙のあと、崇は冷静を取り戻し、七海の隣に座ることにした。

「だから昨日俺が最初に話しかけたときあんなに驚いたのか。」

『うん。小さい頃から聞こえなかったから、もう心臓が飛び出すかと思ったよ。』

七海は胸を押さえて鼓動の高鳴りを表現してみせる。

「そうだったんだ。よくわからないけど悪かったな。驚かせて。」

『ううん。あなたの方が驚いたでしょ。実際、いきなりあんなこと言われたら気持ち悪いもん。』

「ごめん。てっきり変な宗教かと思って・・。」

『誰だってそう思うよ。』

一瞬会話が途切れ、二人の間に微妙な空間が出来る。崇は思い切って切り出すことにした。
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