死刑を求刑された男
第1章 第一章 逮捕
すぐに拾っただけだと説明しようとしたのも束の間、急いで駆けつけてきた駅員数名にあっという間に取り囲まれ、言い分を聞いてもらえぬまま駅員室に連れて行かれた。
駅員室に力ずくで連れて行かれた圭一は一切の自由を奪われ、その場から逃げ出さないようにか部屋の一番奥に入れさせられ、話を聞こうとするものは居らず短髪の男とは別室状態で警察の到着を待たされた。
数分後、所轄の刑事が5人もやって来た。先頭にいる一人の刑事が「お前がスリの犯人か!」と初めから決め付けた様子で、ここでも言い訳出来ぬまま手錠を掛けられ刑事達に囲まれた状態で、駅の出口階段から地上に出され、待機していたパトカーに乗せられ”新橋警察”へと連行された。
それは一つの冤罪事件が作られた瞬間で、偽証してまでも有罪判決に持ち込もうとする刑事達の手によって『無実の人間が、被告人として裁かれようとするまで』に発展していく第一歩でもあった。
そして、何が起きたのか理解出来ない放心状態のまま圭一は自由を奪われていたのであった。
2