みんな・愛してるよ
第33章 第三十三話 優しさ
朝まだ外は暗くウトウトと幸せなまどろみの中のんびり浸かって居たかったものの、毎日の無条件で起き上がり眠い目を擦りながら台所へいつも通り足を向かわせた。
台所に着くと流しにぽつんと二つだけ並べられていた洗われていない弁当箱。
社長室で無駄になってしまったお弁当が何故か中身だけ消えた状態で残されていた。
その弁当箱を見た時に僕の中で何かドス黒いものに囚われ朝食と弁当を作る気力を削ぎ落としていく。
仕方なく部屋に戻り私服に着替えた僕は財布をポケットに突っ込んでまだ暗い外へと足を向ける。
コンビニまでの途中でまだ眠りの中に居るはずの国久を見つけ声を掛けた。
国久の手に握られたコンビニの袋に何故か入っていた冷えピタ。
それも少し気に掛かったから。
「国久。おはよう。何か買い物? 」僕が声を掛けた途端何故か国久はビクッ! と怯えたように固まる。
「いや、ちょっとな。それよりも優夜こそどうかしたの? いつもなら台所にへばり付いてるって康宏言ってたんだけど」国久の言葉には康宏に何かあった事を告げている様な気がした。
「国久、何でこんな時間に起きてるの? 」聞かれた質問には答えずわざと国久が答えにくそうな疑問をぶつける。
「いや、その、康宏待ってるからまた後でな」それだけ言うと、さっさと逃げるようにこの場を離れようとする国久の服を僕の手はすかさず掴んで自分に引き寄せる。
長年の付き合いからかこういう時の僕は自分が納得出来るまで絶対に国久を解放しない事を知っているはず。
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