松川村ペンション殺人事件
第1章 夏樹と章吾
団扇を片手で仰ぎながら玄関に向かい、ドアノブを回し押しあける。
「どちらさま……」
「よーーーう! 夏樹ィーーー!」
章吾がハイテンション並みの勢いで声を挙げ、汗と唾が顔にひっついた。
俺の張り手が勢いおく0・数秒の速さで、省吾のこめかみに命中した。
パチンという良い音。
「痛ってぇ、何すんだよ!」
「暑苦しいんだよお前は! 暑くねえのか!?」
「馬鹿野郎、こんな天気で暑い日はテンション上げなきゃ損だぜ」
オーバーヒートしすぎ……
こいつはとにかくテンションが高い。
小学校の時に省吾と会い、なんだかんだで意気投合した。
いわいる腐れ縁である。
一緒に夜遅くまで遊んだり、喧嘩したり、親だの先公だのに怒られたりして
馬鹿をやっていた日々が多々あった。
「雨、曇りん時はなーんかテンション下がっちまうんだよなぁ、お前もそうだろ」
「そりゃそうだけど……」
「……ところで夏樹、お前……」
章吾が突然に暗い顔つきになった。
「え、どうした」
「……」
章吾はじっと俺を見ている……。
「な、何だよ……どうしたんだ急に……」
「……わきからはみ出てるぜ」
「……え……って、うわぁぁぁ!」
目線を向けるとパンツの隙間から俺の息子さんが顔を出していた。
慌てて両手で股間を覆った。
「ぐ……ぐふふ……だはははははははははは!」
腹を押さえて大爆笑してる。
「写メとって魅花におくろうか?」
「う、うるせー! ふざけてんじゃねえ!」
「はははは、はぁ、はぁ、まあとりあえず冷たいの飲もうぜ」
「お、おい章吾! 勝手に上がるんじゃねえよ!」
俺をよそに家の中へ入ってしまった。
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