暗黒神話①
第2章 夢に現れたもの
さっさと風呂に入って寝てしまおう。そう決めて風呂に入る。だが思わぬ所でまた「怖い」という感情を味わってしまった。
頭を洗っている時だ。完全な無防備。視界は閉ざされている。もしこの瞬間にあの輝きが、或いは輝きを出していた奴が後ろにいたら?そんな不安が急に頭をもたげて来たのだ。杞憂もいいところだが、ワケの分からない恐怖を味わった直後と言うのはこんなものなのかも知れない。
さっさと風呂を出て布団に潜り込む。そうだ、明日京子に聞いてみよう。あんなUFOがあるのか?あったら偶然見てしまっただけだ。宇宙人も目撃者をいちいち誘拐するほど暇じゃあるまい。
その夜また夢を見た。昨日の続きとも思える内容だった。今度は赤・青・黄の光がくるっと輪になり、3色の光が地面に突き刺さるというものだった。よほど昨日の夢が印象に残っていたんだろ。そう結論づけた。これ以上妙な事を抱え切れるもんか。
いつも通り京子と駅で会ったので早速昨夜の輝きについて聞いてみたが収穫は無かった。いや、京子が目を輝かせて食いついて来たのは収穫と言えるかも知れないが、ただそれだけ。今日も痩せたの何のと言われたが、妙な夢だの発光体目撃だの重なれば当たり前だ。
それ以外はいつも通りの毎日……のハズだった。バイトの帰りにまたあの輝きを目撃したのだ。さらにまた夢の続きを見た。空に3色の光の帯が幾つも走り、空を覆い尽くしていく。それに加え何か得体の知れない叫び声の様なものまで聞こえて来るのだ。
ただの夢とも思えなかったので、また朝の駅で京子に話してみた。確か以前京子に見せてもらったオカルト雑誌は「夢判断」なんかも取り扱っていたはずだ。僕よりはそう言った事に詳しいだろうと思ったのだ。
「で、その叫び声ってどんなのだったの?」
「確か――いあ!いあ!って」
「なんだよそれ?」
「祥宏君はちょっと待って。他には?」
「何か名前みたいな……よ、よぐ?よーぐると?みたいな……」
「もしかして・・・ヨグ=ソトース?」
「そう! それだ!」
「……」
「何なんだよその沈黙は? ちょっと怖いぞ」
「二人とも放課後図書室に来てくれる?」
深刻な顔で言われると僕たちは断れなかった。と言うか当事者たる僕は断るつもりはさらさらなかったのだが。
放課後図書室に行くと京子と祥宏はすでに来ていた。
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