暗黒神話①
暗黒神話①
完結アフィリエイトOK
発行者:秋月乱丸
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ホラー・オカルト
シリーズ:クトゥルー奇譚

公開開始日:2011/08/04
最終更新日:---

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
暗黒神話① 第7章 闇で企む者④
「いや、あの……牧谷君のお父さんですよね? 一体どうしたんですか?」

「おいおいヒドイな、幾ら何でも僕と父を間違えるなんて。そうか、懐中電灯のせいで妙な陰影ができてるんだろう、外へ出よう。君が来てくれて助かったよ、ココは真っ暗闇で手探りで周囲を調べるしか出来なかったんだ。以前君が状況を探るしか無いと言っただろう? 僕に出来る範囲でやってはいたんだがね、なかなか成果が上がらなくて意気消沈しかけていたんだ。いやソレよりも君が来てくれたおかげでこの空間が僕の精神が造り出した幻じゃ無かったと照明された事が嬉しいよ。ただ、そうすると僕が瞬間移動した事になって新たな問題が生まれるんだけどね」

 地上への階段を登りながら嬉しそうに語る『中年男』が牧谷と枝松しか知らない会話の内容まで知っている。その事実が枝松に更なる衝撃を与えた。もしや牧谷氏が息子から聞き出したのだろうか? いやそんな事をする意味もメリットも無い。自分達には何の力も無いのだ。軽い目眩を感じながら地上に出た。

 枝松は覚悟を決め、懐中電灯の光を施設の数少ない窓ガラスに向けて即席の鏡を作った。幸いここは山に面した南側だ。目撃されるリスクは比較的低い。

「牧谷さん、御自分の姿を確認して下さい」
「おいおい……一体何だって言うんだ? 仕方ないな」

 数秒後、牧谷正明を名乗る『中年男』は言葉を失った。何度も両手で自分の体を触り、叩き、撫でて震えながら確認する。

――ああ、そうなのだ。信じたくは無かったが、彼が語った事は『信じなければならない事』だったのだ。まだ高校生の友は突然中年の肉体に変わってしまったのだ。これまで豹変した牧谷が行って来た行為の数々。タバコでは無く父の所有する海泡石のマドロスパイプをふかしていた事。ビールなどでは無く高価な洋酒を飲んでいた事。一人称が「ワシ」になっていた事。全て父の真似だと思っていたが、恐らく『父自身がやった』のだろう。そう考えれば全ての辻褄が合う――

 声もかけられずそんな事を考えていた枝松の目の前で『父の肉体を持つ若者』は声も無くヘナヘナと崩れ落ちた。


46
最初 前へ 43444546474849 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ