暗黒神話①
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発行者:秋月乱丸
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ジャンル:ホラー・オカルト
シリーズ:クトゥルー奇譚

公開開始日:2011/08/04
最終更新日:---

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暗黒神話① 第6章 闇で企む者③
 牧谷邸はS高校から西へ自転車で15分程度の距離にある。市内中心部で地元では有名な中華料理店の程近くだ。門の前に自転車を停めてインターホン――この当時では洒落た設備だった――で来意を告げると使用人の源二が門を開け枝松を招き入れた。

「あの、牧谷君の様子はどうですか?」

 当たり障り無い質問に重い意味を込め――あの不可解な痙攣とその後の変容に対する疑念――源二に問いかけた。

「はい、御帰宅後に病院で診察を受けてからはずっとお休みです」
「そうですか。で、お医者さんは何と?」
「精神的な疲れから来る一時的な記憶の混乱を伴う発作ではないかという事です。受験も控えた時期ですし、旦那様とも多少……いや失礼しました」

 裕福な家庭でも――いや、だからこそだろうか、家庭の事情というヤツがあるようだ。助け合わなくても十分やって行ける。その安心感が不協和音を家庭にもたらすのかも知れない。
 自分の様に助け合わなくてはやって行けない家庭とは違う形の苦労があるのか。そんな事を考えながら牧谷は廊下を歩いて源二に付いて行く。
 磨き抜かれた柱や床材。長い年月を経て重厚感を増しているのだろうか、ずっしりとした存在感がある。一歩毎に足を押し返して来る感触もまた通行者に安心感と満足感を与える。こんな邸宅に生まれ育てば牧谷の父―和久(かずひさ)氏の様になれるのだろうか?自信に満ち、余裕に溢れた立ち居振る舞いが厭味でも無く尊大でも無く、ごく自然で品の良い紳士に。
 程無く牧谷の私室前に到着した。源二が膝をつき,中の正明に枝松が見舞いに来た事を告げると

「ああ、僕なら大丈夫だ。お通ししてくれ」
 
 源二が障子を開け、枝松を通す。

「やぁ、具合はどうだい?思ったより顔色は良さそうだけど」
「まぁまぁって所かな。医者が言うには色々と疲れが溜まってるんだろうって事だけど……源二、何か飲み物を」

 源二が叩頭しながら障子を閉じて下がるのを見届け、牧谷が声を潜めて話し始めた。
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