暗黒神話①
暗黒神話①
完結アフィリエイトOK
発行者:秋月乱丸
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ホラー・オカルト
シリーズ:クトゥルー奇譚

公開開始日:2011/08/04
最終更新日:---

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
暗黒神話① 第5章 闇で企む者②
 冬が終わる頃。日向にいれば少しは暖かいと言うぐらいの日。

 枝松と牧谷は昼休みの間、校舎の裏手にいた。コレは別に珍しい事では無く、いつもの事だった。二人はチャイムが鳴ると同時に弁当を持って出て行き、昼飯をパクつきながら論を交えるのがお決まりだった。
 だがこの頃になると当初の様な激しいやり取りでは無く、極めて冷静な展開になっていた。互いに相手をやり込めるのではなく、持論の完成度を高める為の議論とでも言うべきか。
 まず自分の主張を聞いてもらい、欠点や矛盾点を指摘してもらう。そしてソレを改善するために知恵を出し合う。互いに認め合い信頼し合っていなければ出来ない事だった。それぞれのイデオロギーこそ変わらないものの、もはやソレを押し付け合う事もなくなり、自分の主張をとことんまで聞いてくれる稀有な存在に変わっているのだった。

 この日は「自由主義経済を進めれば必ず経済格差が生じる。それを何処まで教養するのか」というテーマについて話し合っていた。弁当も食べ終わり枝松が自分の考えを展開している最中、ソレは突然牧谷の身に起こったのだ。信じられない原初的な恐怖をもたらす変化が。

「――まず格差をどういう基準で考えるかなんだよ。絶対的な金額で以てするのか。例えば年収いくら以下なら貧困とするとか。或いは平均値を出してそこから何%――何分の一でもいいけど、ソレ以下を貧困とするとか。いや、これだと毎年やらなきゃいけなくなるな。貧困と普通を行ったり来たりする人も――」
「うぐぅっ!!」

 突然牧谷が胸を押さえて呻いた。

「おい、どうした――」枝松が肩に手をかけようとする間も無く、牧谷の体が続け様に痙攣する。あっと思ううちに痙攣は酷くなり、我が目を疑う程に――残像を残すほどになっていた。
 こんな動きに人間の体が耐えられるものなのか?骨格は砕け筋肉も断裂するのではないか?そう考えた枝松は牧谷の体を押さえつけようとしたが、振り回された左腕が当たっただけで跳ね飛ばされてしまった。二人とも細い方だが、一人の人間を片腕で跳ね飛ばすとは尋常では無かった。しかも座ったままで。


31
最初 前へ 28293031323334 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ