未曾有の教習生
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発行者:てきーら
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/08/01
最終更新日:2011/08/01 00:26

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未曾有の教習生 第1章 川辺の教習所
また木塚は、自分より断然歳の若い、多くの教習生と触れ合うのも楽しみの一つであった。このゆったりと流れる川沿いの教習所に勤めて、はや三十年の月日が流れた。
(本当に早いよな。老いてゆく時間の流れは…)
ゆったりと緩やかに流れていく河川を眺めながら、もう数年で還暦を迎えると思うと、木塚は、ふと若かりし頃の我が身を思い出す。当時まだ毛髪は多分にあり、精魂込めて熱く生徒に指導出来ていた自分。だが、今は違う。多分にあった毛髪もいつの間にか疎らになり、だらし無い生徒に血管を浮き上がらせる事もなくなった。昔は、室内でふざけている教習生に対し、歯に衣着せぬ物言いをしたものだ。だが今では、路上教習で速度オーバーして走る生徒の隣に座っていても、
「もう少しスピード落としたほうがいいぞ」
と、補助ブレーキをさりげなく掛けながら物静かに伝えるようになってきた。齢(とし)のせいもあるかもしれない。穏やかな物言いのほうが自分にとっても楽になってきたのであった。風は南から初夏の爽やかな匂いを伴って教習所にやってくる。そして木塚の皺寄った頬をも掠めていく。
(おぉ、若い奴らが駄弁りながら楽しげに闊歩してるなぁ)
まだ二十歳過ぎたか過ぎないくらいの若者を見ると、我が息子の事もふと思い出す。
(あいつも彼等と同い年くらいの時、免許取るためにほとんど毎日教習所通っていたっけなぁ‥)
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