DEAREST -another story-
DEAREST -another story-
成人向完結
発行者:穂積
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:DEAREST

公開開始日:2011/06/09
最終更新日:---

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DEAREST -another story- 第2章 In the forest:幸せに潜む影
「………こわ、い…んだ。」
「うん。」
「…唯一の人ができて、人間になって、初めて思った。」

吸血族として生きてきた百幾年、嬉しいことも楽しいこともあったが、それ以上に辛いことや苦しいこともあった。
それは、仲間や家族の死であったり、己が身に降りかかった困難であったり様々だが、中でも今現在シルエを苛むのは、ある一つの記憶。

「…ラト…私は………私は以前、人にこの身を奪われたことがある。」

そう、ただ一度だけ、彼女は己の命を守るために、自分から複数の人に身体を開いたことがあった。
確かに愛を誓った者ではない人間に身体を委ねるのは苦痛だった。しかし身を開くことで自分の命を守ることができるならば、と迷うことなくそうすることを選んだのだ。
そのときも、その後も、それが最善の選択なのだと彼女はそう割り切っていたし、命に重きを置く彼女はそれを卑屈に思うことなどなかったのだが。

「…ラトを愛して、初めて…自分が醜いと、汚らしいと思った…。」

優しい彼は、きっと自分を許すだろう。
大丈夫だと慰め、癒してくれる。
現に今も、話を聞きながら彼女の心を守るように抱きしめていてくれるのだから。

「…それでもラトは、私を愛してくれる…けど…」

理解してはいるけれど、嫌われてしまうのではないかと恐れていた。自分と生きる未来を選んだことを、後悔させてしまうのではないかと。
恐ろしくて、恐ろしくて。
その恐怖と不安が、悪夢になってシルエを襲ったのだ。
そんなシルエの言葉に、ラトがぐっと腕に力を入れる。全ての不安を消し去るような抱擁に、シルエの瞳が僅かに揺れた。次いで、彼女の絹のような黒い髪に少し熱を持ったラトの唇が落とされる。

「シルエは、綺麗だ。」

はっきりと、力強く告げられた言葉に、小さくシルエの肩が震えた。
それに気づいたラトが、更に彼女を腕に抱きこむ。

「俺は、シルエに出会えて本当によかった。シルエを愛せて本当に嬉しい。だから、苦しい思いを選んで生きてくれて、本当にありがとう。」

何か上手く言えないけど、と少し照れたように呟くラトの言葉は柔らかく、まるで心まで温かい彼の命に包まれているようだとシルエは思った。

感謝の言葉をくれた彼に、シルエも震える声でありがとう、と呟いた。
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