DEAREST -another story-
DEAREST -another story-
成人向完結
発行者:穂積
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:DEAREST

公開開始日:2011/06/09
最終更新日:---

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DEAREST -another story- 第2章 In the forest:幸せに潜む影
シルエがラトの死で、自らも死を覚悟したあの時。
神様は二人に思わぬ奇跡をくれた。

再び命を得た二人は、しかし人里に戻るわけにもいかず、寧ろ利己的な欲に塗れた人の世には戻りたくなかった。

幸い、追っ手からも上手く逃げ切り国境も無事に越え、長い年月を生きてきたシルエの知識を駆使してこの森に辿りつき、二人の住処を得ることができたのだ。

それからの暮らしは、ラトにとって初めてのことばかりだった。
物心ついたときから教会で生活していた彼は、そこから離れたことが殆ど無い。町から出たことなど皆無である。料理すら、収穫済みの野菜を使い、捌かれた肉や魚を軽く調理するくらいだったのだ。
彼がまず覚えなければならないことは、食べ物を調達することだった。

それに対してシルエはというと、流石は齢百を超える大先輩、獣だろうが魚だろうが大抵のものは捌けたし、無くなってしまった力に頼らずとも獣を狩ることが出来るくらいの運動能力もあった。
一応男性としての意気込みもあったラトは自分を情けなくも思ったりしたが、柔らかく笑うシルエに、これから頑張ればいいのだと諭され、早く出来るようになって自分が彼女を支えるのだと必死になって頑張った。
その結果、今ではしっかり食料調達はラトの仕事である。
まぁ、あまりに大きな獣に来られると逃げるしかないのだが。そこはお互い、充分に気をつけていた。
因みにここも、大型の獣の縄張りからしっかりと外れた場所である。



「ホント、命ってすげぇよなぁ…」

木々に囲まれ、様々な命の声の響くこの場所にいると何か大きなものに包まれているような気分になってくるから不思議である。
重なる葉が風に揺れる音も、高くリズムを刻む虫たちの声も、小鳥のさえずりすら、あの教会で暮らしていたときは気にもしなかった。自分の中にあったのは、変わらない日常に積もる倦怠感と、何かを渇望する乾いた心。
唯一の心残りである親友がいなければ、自分はとうに生きることを放棄していたかもしれない。
それはとても愚かで、傲慢なことだと、今ならはっきりと解るのに。

ラトは小さく溜息を零すと、小屋の中で待っているであろう最愛の人を追うべく、扉に手をかけた。
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