DEAREST -another story-
DEAREST -another story-
成人向完結
発行者:穂積
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:DEAREST

公開開始日:2011/06/09
最終更新日:---

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DEAREST -another story- 第1章 未来へ…

「…シルエが…シルエが、助けてくれたんだ。」
「…え?」

感極まったようなラトの声に、シルエが訳が解らないという表情で彼を見上げる。
訝しげに傾げられた頭に、ラトがくすりと小さく笑った。

「…気付かない?」

少しだけ申し訳なさそうにラトが言う。
その言葉に更に首を傾げるシルエに、苦笑を浮かべたままラトはそっと手を伸ばした。
彼女の肩に散る髪を、一房手ですくう。

シルエはそれを目の端で捉えた途端、大きく目を見開いた。

「…これは…」
「シルエが俺に命をくれた。これのかわりに…。」

そこにあったのは見慣れた銀糸ではなく、夜の闇のような漆黒の髪。
見開かれた彼女の瞳も宝石のような紫色ではなく、髪同様吸い込まれるような黒に変わっていた。
シルエは更に確かめるように、自分の耳に手を添える。
その先端も以前のような尖りを失くし、今は人間のように緩く弧を描いていた。

そう、それは紛れもなく人間の姿。

「…私…人間に…?」
「あぁ…ごめんな?俺の所為で…。」
「…何故謝る?」
「だって…」

永い命、丈夫な身体、人にはない様々な能力。
それらを全て、彼女は失ったのだ。
しかしラトが言葉を発するより早く、シルエが再び彼の胸に顔を埋る。

「私はとても嬉しい。永遠の命なんかより、ラトと共に生きる方がずっといい。」
「…シルエっ。」

シルエがゆっくりと顔を上げた。
その顔は喜びと希望に満ちている。

永遠の命よりも、愛する者との未来を。
並外れた能力よりも、共に支えあえる今を。


「共に生きよう…生きて、一緒に歩んでいこう。」


囁かれた言葉は、少しだけ震えていた。




柔らかな朝の光が見守る中、二つの影がそっと重なり
彼らの未来を祝福するように、優しい風がそっと吹き抜けていった。
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