DEAREST -another story-
第5章 In the forest:楽園
さわさわと、頬を撫でる風が心地いい。
ちゃぷ、と水の跳ねる音にシルエはうっすらと目を開いた。
「…大丈夫か?」
そこには少し申し訳なさそうに眉をハの字にした愛しい人の姿。
さっきまでの男の顔を消し去り、幼さを浮かべたその表情に、未だぼんやりと彼を見つめていたシルエがくすりと小さく笑った。
そのまま少し気だるい腕を持ち上げ彼の頬にそっと添える。
「…おまえホントに初めてか?」
柔らかく微笑む彼女から飛び出た、表情に似つかわしくない言葉に、ラトがピシリと固まった。
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