DEAREST
第9章 DEAREST
「…畜生っ…!!」
「…ラ…ト…っく」
「シルエっ!」
悔しさに血がにじむまで唇を噛みながら、苦しそうに這い蹲るシルエを覗き込んだ。
彼女の額にはびっしりと汗が浮かんでいる。
呼吸は収まるどころか更に短く乱れていった。
「……離…し………近…づいては…ダ、メ…」
必死に耐えるように、乱れた呼吸の合間から途切れ途切れの言葉が届く。
しかしそれでもラトはシルエから離れなかった。
そんなラトに泣きそうになりながら、シルエは自らの身体の変化に怯えていた。
必死に自分の身体を抑え込むように、胸に両手を抱え込み身を丸めて耐える。
身体が焼けるように熱い。
まるで何日も水分を摂っていないかのように喉が乾いた。
ぼやける視界に映るのはラトの首筋にはっきりと見える赤い流れ。
この乾きを潤すことのできる唯一の液体。
しかしそれを口にするということは、
目の前の愛しい人の命を奪うということ。
…それだけは嫌。
絶対に口にしてはいけない。
初めて求めた、愛しい命。
…失いたくない。
…失いたくない。
…失いたくない。
………………失いたく…。
…………………………っ…。
シルエの視界が真っ赤に染まる。
彼女の意識はそこで………途切れた。
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