DEAREST
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完結
発行者:穂積
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:DEAREST

公開開始日:2011/06/06
最終更新日:---

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DEAREST 第9章 DEAREST
血を吐くような叫び。
シルエの長い人生でこれほど強く何かを願ったことはなかった。
自分の頬を濡らすものに、切なげに眉を寄せていたラトが、伏せていた顔をゆっくりと持ち上げる。
見上げたシルエの目元は涙で赤く染まり、その虚ろな瞳は不安と恐怖に揺れていた。


「…好きだ。」

突然の言葉にシルエが目を見開く。

「シルエが、好きだ。」

月明かりに照らされた、太陽のような笑みに、シルエはくしゃりと顔を歪める。

「…ラト。」

互いの顔がゆっくりと近づく。…が、互いの吐息を感じた瞬間、シルエが大きく目を見開いた。

「…っ…あっ…ぁあっ!!」
「シルエっ!?」

緩やかに流れていた空気は一気に四散し、替わりに零れたのはシルエの苦しみの声。
細く冷たい身体をビクビクと痙攣させながら荒い呼吸を繰り返している。

「シルエっ!…シルエっ!?」

何がどうなったのか全く解らない。
唯はっきりしているのは、大切な人が苦しんでいるという事実だけ。
訳も分からず何とか苦しみから彼女を救おうと必死に背を撫でていた。が、その時。

「やっと効いてきたか。」

あの男だった。

「てめぇっ!!シルエに何をしたっ!?」
「ふん…不届き者め、やはりお前だったか。」

男の顔が醜く歪む。ラトは憎悪の瞳を向けながら唇を噛んだ。

「知りたいなら教えてやろう。その化け物の飯に薬を混ぜたのだ。」
「まさかっ…」
「愚か者め…毒などではないわ。唯の興奮剤よ。」
「興…奮剤…?」

訳が解らず、ラトが訝しげに眉を顰める。それを見た男は面白そうに声を上げて笑った。

「そう、化け物の本能を増幅させる薬だ。」

この男は何を言っているのか。目の前で笑う男を、恐ろしいものを見つめるような目で見上げると、彼の表情に満足したのか男は更に続けた。

「その化け物はこれから再び罪を犯す。人間殺しの罪を。」

目の前が真っ赤になるのを感じる。怒りでどうにかなりそうだった。

「…どっちが……どっちが化け物だ!!」
「化け物と交わろうとする不届きものに言われたくは無いわ!!」

ラトは思いつくだけの罵声を浴びせたが、男は何事もなかったかのように背を向け去っていった。
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