DEAREST
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完結
発行者:穂積
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:DEAREST

公開開始日:2011/06/06
最終更新日:---

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DEAREST 第9章 DEAREST
「…シルエは何で町に来たんだ?」

町にさえ出てこなければ、死ぬこともなかったのに。
問いにゆっくりと振り返り、シルエはそっと柔らかく微笑んで再び月に視線を戻した。

「弟が、病にかかったんだ。」
「…病?吸血族も病にかかるのか?」
「十を超えればそんなこともないんだけどね。幼い吸血族は人間と変わらない。」

その言葉に思い当たったことがあったのか、ラトが僅かに眉を顰める。

「…薬を…買いに出てきたのか。」

たったそれだけで、彼女は殺されるのだ。
何かを堪えるように唇を噛み締めるラトを、シルエが苦笑を浮かべて見つめる。
鎖に繋がれた手を持ち上げ、彼の頬にそっと添えながら噛み締めた所為で白くなった唇を指で触れた。
弾かれたようにラトが顔を上げ、次いで泣き出しそうに顔を歪める。

「シルエは…強いな…。」

再び顔を俯けたラトが、僅かに声を震わせながら呟いた。
その言葉に、今度はシルエが顔を歪める。

「………私は強くない。」

闇に溶けてしまいそうな声は、とても小さく弱々しいものだった。
ラトがのろのろと顔を上げる。

「…私は…恐い。…お前を…ラトを失うのが恐い。」

彼女の顔を見たラトが、はっと息を呑んだ。
その紫暗の瞳からは零れるように涙が溢れ出し、キラキラと月の光を反射しながら頬を伝っている。
シルエが涙に濡れた顔をゆっくりと上げた。

重い沈黙が支配する中、どちらが先に動いたのだろうか。
お互い引き寄せられるように、それぞれぴったりと身を寄せ合った。

シルエは鎖で繋がれたままの両腕にラトの頭を抱え込み、ラトはシルエの銀糸のような髪が落ちる首筋に頬を寄せる。
触れた肌は、寒さとは違う何かで震えていた。

「…死にたくないっ」

吐息と共に吐き出された声は、まるで慟哭のようだった。

「…生きて…お前とともに生きてゆきたいっ!!」
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