DEAREST
第9章 DEAREST
―――――夜
月の光に照らされて、冷たい床に影が落ちる。
真夜中になって、生きとし生けるものが皆眠りに落ちても尚、二人は眠ることを拒んだ。
氷のような壁に背を預け互いの身体を寄せ合いながら、天井付近の小さな窓から覗く月を無言で見つめていた。
先に沈黙を破ったのはラトだった。
「…シルエはさ。」
「…ん?」
「…シルエはずっとここでこうして月を見てたのか?」
「…そうだな。」
小さく、どこか自嘲するように笑みを浮かべたシルエが頷く。
「…月の光は心を癒す。あの淡く優しい光を見ていると心が落ちつくんだ。」
その姿を横目で見つめながら、ラトは思う。
彼女はきっとこうして月を見つめながら、それと同時に己の死を見つめていたのだろう。
誰に縋ることもなく、唯己の運命を受け入れながら。
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