DEAREST
DEAREST
完結
発行者:穂積
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:DEAREST

公開開始日:2011/06/06
最終更新日:---

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DEAREST 第9章 DEAREST
―――――夜


月の光に照らされて、冷たい床に影が落ちる。
真夜中になって、生きとし生けるものが皆眠りに落ちても尚、二人は眠ることを拒んだ。
氷のような壁に背を預け互いの身体を寄せ合いながら、天井付近の小さな窓から覗く月を無言で見つめていた。
先に沈黙を破ったのはラトだった。

「…シルエはさ。」
「…ん?」
「…シルエはずっとここでこうして月を見てたのか?」
「…そうだな。」

小さく、どこか自嘲するように笑みを浮かべたシルエが頷く。

「…月の光は心を癒す。あの淡く優しい光を見ていると心が落ちつくんだ。」

その姿を横目で見つめながら、ラトは思う。
彼女はきっとこうして月を見つめながら、それと同時に己の死を見つめていたのだろう。
誰に縋ることもなく、唯己の運命を受け入れながら。
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