DEAREST
DEAREST
完結
発行者:穂積
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:DEAREST

公開開始日:2011/06/06
最終更新日:---

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DEAREST 第8章 SATURDAY
「…何を言うかと思えば…この私に人間の知り合いなどいるわけがないだろう?」
「…庇い立てする気か?」
「庇うも何も、知らないものは知らない。」
「…まぁいい。どのみち此奴の処分は変わらぬ。何しろこの私がこの目で見たのだからな!」

訝しむように神父を見上げたシルエの頭は、既にパニックを起こしかけていた。自分とラトが会っていたことが判明すれば彼は唯では済まない。よくて永久の幽閉か、否おそらくほぼ極刑だろう。
どうしよう、どうすれば彼の人を助けられる!?
シルエは今まで生きて得た全ての知識を総動員させて考えたが、真っ白になった頭は大して役に立ってくれない。

「…仮に私が誰かと接触していたとして、この暗闇の中それがその神父見習いだと誰が証明できる?」

冷たく光る紫の瞳は、これまでラトが見たことの無い色を浮かべていた。

「この闇の中、人間風情が顔を判別できるのか?」

彼女の言葉に、年老いた神父は憎々しげにシルエを睨み付けた。

「そんなものっ…声で判るっ!」
「…これはこれは、耳も人外並みに優れているとみえる。」
「ええいっ黙れっ!!」
「人間の感覚で判るはずがないだろう。」

言外に化け物と言われた神父が、顔を真っ赤にさせて喚いた。
本当に見ていたならば、弱っているとはいえ、吸血族であるシルエが男の存在に気付かないはずがない。おそらくこの神父は顔も確認できないような遠くから判断したのだろう。
いや寧ろ判断がつかない犯人を、何故だか判らないがラトに被せようとしたのかもしれない。運悪く本当に言い当てられてしまった形にはなるが、それをわざわざ教えてやる必要も無かった。
男の目は、明らかにラトを憎んでいた。どうにか、彼の憎しみをラトから逸らさなければならない。
しかし、シルエがぐるぐると考えているうちに、神父が思ってもみない行動に出た。
拘束していたラトを、縄を解かないままシルエの入っている檻に入れたのだ。

「…つっ…てめぇっ!」
「どうせ貴様も磔だ、その前に化け物に食われてしまっても誰も文句は言うまい!!」

石の床に転がるラトを満足げに見下ろした神父はそのまま三人を引き連れ独房を去っていった。
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