DEAREST
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完結
発行者:穂積
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:DEAREST

公開開始日:2011/06/06
最終更新日:---

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DEAREST 第7章 FRYDAY
「…その…ありがと、な。」
「…え?」
「だからっ…シ、シルエのおかげで…俺、自分を見失わずに済んだ。」

その言葉に少し照れながらも嬉しそうにシルエが微笑む。
今夜は雲もなく、月の光が二人の表情まで映し出していた。

この短い期間で二人はいろいろなことを話し、そして打ち解けていた。
互いに好意を持てたことは勿論、ラトよりもずっと長い間生きているシルエは多くの知識を持っていて、しかも彼女はとても話すのが上手なのでラトは次から次に彼女の話を聞きたがった。
シルエもまた、目を輝かせて話を聞くラトに自分の持っている知識を伝えることが楽しくて仕方がなかった。

その時間は本当に楽しくて、だから二人とも忘れていたのだ。



此処がいったい何処なのか。



此処は何を待つ場所なのか。



そして二日後何が行われるのかということを…。










「俺シルエのこと結構好きだなぁ…。」

それはラトが何気なく漏らした一言。

「何でも知ってるし、一緒にいて楽しい。」

シルエは急に心が冷めていくのを感じた。
彼女の中で再び言いようもない暗い感情が膨らむ。


胸が痛い。痛くて痛くて、内側から破裂してしまいそうだった。



「…ありがとう」


今のシルエには、この一言が精一杯だった。
握りしめた手は震え、いつもは微笑を浮かべているその顔は蒼白く凍り付いている。

だが、照れたように顔を背けているラトは気付かない。
何の疑問もなくその言葉を受け入れた。
とても嬉しそうに微笑みながら。

シルエはまた、胸が痛むのを感じた。




二人は知らない。


独房の入り口で息を潜めて駆けだしていった一つの黒い影を。
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