DEAREST
DEAREST
完結
発行者:穂積
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:DEAREST

公開開始日:2011/06/06
最終更新日:---

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DEAREST 第5章 WEDNESDAY
夕方ら降り出した雨は雪へと変わり、ただでさえ寒さの厳しい独房は、より一層冷たい空気に支配されていた。
空は厚い雪雲に覆われ、昨日まで孤独な独房の住人を慰めるような柔らかい光を与えていた月も隠れ、暗い檻の中の視界は殆ど無かった。

かろうじて見えるのは青白い鼻先と、雪の積もった小さな換気用の窓枠である。

シルエは小さく背を丸めた。
今日こそは凍死するかも、などと自嘲の笑みを浮かべながら、ガタガタと震える腕で己の身体を抱きしめた。

もう手足の感覚はない。
自分が生きていることさえ信じられなかった。


ガツッ――――

「…ってぇ」

半分眠り掛けていたシルエの耳に聞き覚えのある声、否うめき声が届いた。
それはシルエの意識を闇から引き戻し、少しだけ霧の晴れた頭で声の主を瞬時に思い浮かべる。

「…ホントに暇人だな。」

苦笑ではあったが、彼女は自然に笑みを浮かべていた。
この暗さでは、顔は愚か姿さえ見えるはずはない。
しかしその方向からは予想通りの声が返ってきた。
自分の方に向かう足音とともに。

「俺は特別なんだ。」
「…偉そうなやつだな。」

その声にくすくすと笑いながら返事をしつつ、シルエはどこか自分がほっとしていることに気付く。
いつも自分を温かく迎えてくれた弟達の笑顔が見えた気がした。

今まで聞こえもしなかった自分の鼓動が耳に暖かく響いた。




後数分で今日が終わる。
教会で生きる者たちは皆、やすらかな眠りの中で夜を過ごしていた。

一人の人間と一人の吸血鬼を残して…。
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