Love Story~斉藤一
第11章 「斉藤の決意」
彼がそう言うと、そこにいた沖田と平助はお互い顔を見合わせた。近藤勇はオランダ人であるヒュースケンを、永倉率いる一派から守ったことがあるのだ。
「尊皇攘夷とはいえ、闇雲に外国人を殺すことがあってはいけない。この日本はまだまだ外国と比べ遅れをとっている。彼らに学ぶべきところは学び、そして上様の元、日本を強い国にする。それが私の願いだ。だから、斉藤くん、隊務服を返上することはない。上様には私から、話をしてみる。きっとこの事情を説明すればわかっていただけるはずだ。だから、12月までに彼女が立派に仇討ちできるように鍛えてやって欲しい。」
「ありがたいお言葉、感謝します。」齋藤は一礼をした。
「まあ・・・君だったら、どっかの誰かとは違い・・・。」そう言いかけたところで近藤は土方をちらっと見た。
「女に手を出すことはない、どうせそう言いたいんだろ、近藤さん?」
「ええ?どういうこと?どういうこと???」平助は鬼の副長に、過去何があったのか知りたそうだった。
「山崎に、伊勢谷という男を調べさせろ。」土方はそう言って話をごまかした。
「それと齋藤、これを持って行け。足くじきに効く石田散薬だ。俺が持って行くと、気に入らない人がいるみたいだからな。」
土方は昔、ヒュースケンというオランダ人が愛した日本人女性に、ちょっかいを出したことがあった。今は鬼の副長などと呼ばれているが、実は何度も女性問題で近藤を困らせていた。また当時永倉新八は、何を隠そう生きていくために金で雇われ、この外国人を闇討ちしようとしていたところを、近藤勇に引き留められた経験があったのだ。
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