サイド イフェクツ-薬の鎖-
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発行者:てきーら
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ジャンル:ノンフィクション

公開開始日:2011/04/25
最終更新日:2012/09/23 14:28

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サイド イフェクツ-薬の鎖- 第10章 DATA10 赤面、そして沈鬱―元モデルの告白―
そう考えると苺夏は、空怖くなって思わず顔を床に伏せて、少しばかり固く瞼をぎゅっと閉じたままでいた。まさにこの、“突発的に悪い変化が急に前触れなく現れてきたら”という近い未来に対する予期できない不安や恐怖が、本人の潜在意識下に溜まってしまうと、表面で活動している心とは無関係に、発作的に突然その不安や恐怖といったマイナスの観念が現実に具現化されることとなり、日常生活のあらゆる場面で支障をきたしてしまうのである。この若いモデルの女のケースを見ると、午前中に一度恥じらいの心情がふいに涌いてきて顔が赤らんでしまったという体験が、潜在意識という心の奥底にある意識でない領域に知らず知らずのうちに刻み込まれてしまったため、午後の撮影間近に来て突如としてまた、無意識のうちに午前中に生じた体験が現実というノンフィクションのストーリーに撮影の中断という一頓挫を生み出してしまったのである。
(平幡さーん。俺だけど、聞こえる?) しびれを切らして、カメラマンはまたトイレの前までやってきて声を掛けた。どのくらい化粧室の鏡の前でそうしてやって悶々としていたことだろう。苺夏は未だ胸中の整理が出来ず沈んでいたが、聞き覚えのある声にハッとして我に返り、俯けていた顔を素早く上げて、思わず外のほうに視線を移したのであった。
「…あっ、すみません、もう大丈夫です。今戻ります」
「君、本当に大丈夫?」
モデルは、今立っている洗面台の前から些か高声に自らのコンディションが回復したことを伝えたが、その声遣いは頼りない感じにカメラマンには聞こえた。
(口先だけ、もう心配はないと言われてもね…二度ある事は三度あるっていうし……)
日ノ岡は、憂慮とも呆れともつかない苦々しい表情{かお}で、彼女がトイレから一刻も早く出てくるのをドアの側から見守っていた。
「…あっ、二回もこんなことなっちゃってすみませんでした。日ノ岡さん」
「……………」
「……すみませんでした、ホントに………」
カメラマンは神妙な面持ちで腕組みしたまま無言だったので、新米のモデルの女は心底申し訳なさそうに謝り、深々と頭を下げた。
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