サイド イフェクツ-薬の鎖-
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発行者:てきーら
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ジャンル:ノンフィクション

公開開始日:2011/04/25
最終更新日:2012/09/23 14:28

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サイド イフェクツ-薬の鎖- 第10章 DATA10 赤面、そして沈鬱―元モデルの告白―
(それにしても妖精みたいな雰囲気のする女だな。巷の若い娘にはない透明感というものが伝わってくる……)
日ノ岡は暫しのあいだ、さりげなくそっとモデルのほうを眺めていたが、やはりさっきと同じく、そして魂が洗われるような崇高な感じさえ彼の胸中に染み入ってきたのであった。
「こんな感じ……ですか?」
「………あ、お、お、おう。……おう、そうだね。おぉイイ感じじゃん」
女モデルの小さな呼び声にもすぐには気付かず、ほんの短い間ではあったが、思わず恍惚感に浸ってしまったのである。そしてまた、甘い商売柄の声をして被写体の女を上手くその気にさせようとする。苺夏のほうも園児が衣服を着るような遅くじれったい動作をしてはいるものの、カメラマンの指示された通りのポーズを比較的きちんと作っていけているのであった。
「はーい。そしたらね、今度顔の向きと表情なんだけれど、顔の向きはね、真正面に対して左三十度くらいで顎引き締めてさ、撫で肩のほうにけっこう引き寄せる感じかな。で、そこから視線は右に真正面を見てさ、顔はとにかくスウィーティーな表情を作ってもらいたいんだよね。要約して言うなら、どこか頼りなくも甘く淡い哀しみの色を帯びた艶{なまめ}かしい表情ってやつかな。ハハハ、まー簡単に言っちゃえば、数多{あまた}の男を君一人に惹きつけてしまう感じかな。まぁ、たとえば眼の前に男がいるとして…だね。君はその男に声を掛けてもらえるような甘い視線を投げ掛ける‥みたいな。自分の中でイメージを膨らませてみてさ、ちょっと作ってみてごらん」
「…ハ、ハイ。わかりました」
少年みたいに熱っぽい顔でまるで立て板に水とでもいうかの如く、面貌{かお}に似合わず女々しくとろけるような業界人の気障っぽい声が小さなスタジオに響いて聞こえた。対照的に若い女のモデルはといえば、何かに怯えたようなはっきりしないもどかしい顔貌{かおつき}でカメラマンの蛮人のように真っ黒い面を見据えていた。そして、日ノ岡の要望に対してか弱そうに頷くと、驚いたことに途端に、経験をそれなりに務めたモデルに負けないくらに凛と澄ました表情を作って見せた。
「そう。いいねぇ、君。さすが期待のニューフェースだね。それでもう少しだけさぁ、哀愁にとり憑かれた瞳で男を意識した感じの視線をこっちに向けてもらいたいんだよね」
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