サイド イフェクツ-薬の鎖-
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発行者:てきーら
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ジャンル:ノンフィクション

公開開始日:2011/04/25
最終更新日:2012/09/23 14:28

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サイド イフェクツ-薬の鎖- 第10章 DATA10 赤面、そして沈鬱―元モデルの告白―
「………こ、こうですか」
モデルの若い女は、少女のようなどことなく愛らしい顔貌{かおつき}をして見せたが、ふだん人前ではなかなかオモテに出すことのない表情に恥じらいを感じてしまったのか、すぐに頬はまた淡い桃色から朱色へと染まってきた。カメラマンもその変化にさっそく気付いて、幾分驚いてかモデルの赤らんできた表情{かお}のほうを少しばかり注視していたが、
「お、おーい。そんなに恥ずかしがることはないぞ」
「………い、いえ。……別に、……大丈夫です」
日ノ岡の懸念の籠った問いに、苺夏は軽く目許を緩ませてその場をどうにか取り繕おうとしたが、さっきから面{かお}に胸中の心境が表れやすい自分がいると思うと、なんだか気が気でなくなってきたのであった。
「ちょっとすみません。トイレ行ってきてもいいですか」
「えっ?あっ、うん、別にいいけど…」 「ごめんなさい、すぐ戻ります」
そう言って彼女は、そそくさと何か隠し事でもあるように、片手で顔を隠しながら、視線も落とし気味にしてその場を一時立ち去った。
(どうしよう……今までは緊張してもこんな顔赤くなっちゃうことなかったのに……いったいどうして……)
(……今あたしがしてるのは仕事なんだから…そう、だから………)
トイレの鏡の前で苺夏は、心中の陰翳を含んだ姿をそこに映し、空ろな眼をして立ち尽くした。何とかして、本来のあるべき自分を呼び戻そうと、妙に焦りの感情さえ出てくる。
(大丈夫。…別に何も恐い事なんかないんだから……)
下唇を少しぱかり噛み締め、自らを奮い立たせるように、小さなてのひらに握りこぶしをぎゅっと作った。それでも未だ胸の内で、あの何と表現したらいいかわからない空恥ずかしい気持ちがもどかしく蠢いている。また不意にすぐ、カメラが廻っている最中にそれが襲ってくるんじゃないかという不安が、どうしても拭えない。
「おーい平幡さん、聞こえるかな?もういい加減大丈夫かな?」
「こっちも時間で動いてるからさ、早めに戻ってきてほしいんだけど」
憂悶とした心情がまだ残滓のように胸の片隅にへばりついている時、廊下のほうからくだんの異性を口説き落とすような甘くて気障っぽい声が聞こえてきた。撮影の最中に立ち去る時の様子が異状に思えたので、何事が起こったのかとカメラマンは心配になって声を掛けに来たのであった。
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