サイド イフェクツ-薬の鎖-
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発行者:てきーら
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ジャンル:ノンフィクション

公開開始日:2011/04/25
最終更新日:2012/09/23 14:28

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サイド イフェクツ-薬の鎖- 第10章 DATA10 赤面、そして沈鬱―元モデルの告白―
「苺夏ちゃん、もう東京は慣れた?」
女マネージャーの黒川は、彼女の緊張を解きほぐすように柔らかい表情{かお}でにっこりと微笑んだ。
「最初の撮影はモノトーンのセクシィワンピに黒の柔らかストローハットでいこうじゃないの」
金髪の、苺夏と同い年代くらいのマネージャーは、おどけたように軽いノリでモデルデビューの初舞台の案件を切り出してきた。想像以上に華々しい幕が開けたのに面食らったせいか、かえって表情には戸惑いの色が浮かんできた。
「大丈夫だよ。そんなシリアスに考えなくても。みんな誰でも最初は緊張してしまうものだから」
女マネージャーは再び、庶民的かつ安堵感たっぷりの愛嬌ある微笑{えみ}を顔全面に湛えながら、新人モデルにありがちな不安ってやつを取り除いてあげようと努めた。撮影は三日後にすぐ、渋谷界隈の小さなスタジオで行われる事となった。日を追う毎に秋は深まり、二カ月前なんかと比べると信じられないくらいに青い空のキャンパスが爽やかに感じられていたが、その日は氷菓を頬張っていても驚かれないくらい異様に日差しがぎらぎらとして、昼間は汗ばむくらいの陽気となった。苺夏はこの撮影当日、花柄模様のワンピに紺のジーンズ姿で出掛けていった。モデルデビューをするということもあり、スタジオへ向かう人込みのなか、期待と不安という水と油のような二つの感情が、繊細なココロの天秤の上で絶えず揺らいでいた。面持ちも何となく頼りない。
「あっ、苺夏ちゃんだ。こんにちは。今日は初めてで慣れないポーズばかり指示されると思うけど、焦らなくていいからね。ゆぅっくりと、カメラマンさんの言われた通り落ち着いてやれば全然大丈夫だからね」
四方を鼠色の古ぼけた雑居ビルに囲まれた、大通りから外れて二百メートルほど裏路地に入ったところに構える小さなスタジオに着くと、さっそく、金髪の気さくな女マネージャーが例の天使みたくとろけるような笑顔で今日も彼女を温かく迎えてくれた。黒川の小さく束ねたポニーテールが、今日はひときわ輝いているように見えた。
(大丈夫かな、わたし………。ちゃんと言われた通り、うまくキメられるかなぁ……)
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