サイド イフェクツ-薬の鎖-
第10章 DATA10 赤面、そして沈鬱―元モデルの告白―
「はい。お待たせしました。番号札十五番の方診察室へどうぞ」
「失礼します」
医師の眼の前に表れたのは、エルメスの格調高いフレグランスな薫りを全身に纏わせ、尻の上まで伸びている長いダークブラウンの髪をした未だ二十代と見て取れる女で、見た感じ背も一般の女よりも高く、一七○近くはあった。降り積もる粉雪のように色白な顔で、ポーカーフェイスを気取っているのか今時の若い女に流行りのでかいスモーク色したサングラスをかけていた。白い薄手のロングカーディガンはどことなく女性らしい繊細さを感じさせ、極めつけはその内側の黒のキャミソールから垣間見えるふくよかな胸の谷間であり、これには堅物で気難しい雰囲気を持つ播野も思わずそこに眼がいってしまったほどであった。下はこれまた似合う、だぶだぶで作業衣のようにも見える濃いグレー色をした巷{ちまた}で流行のイージーパンツをさりげなく穿きこなしていた。
(すごく洒落ているのはわかるが、さすがに病院に来る恰好ではないよな)
場違いというか、なんとなく気恥ずかしいという感情にも駆られてくる
(この女、雰囲気からするともしや……)
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