サイド イフェクツ-薬の鎖-
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発行者:てきーら
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ジャンル:ノンフィクション

公開開始日:2011/04/25
最終更新日:2012/09/23 14:28

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サイド イフェクツ-薬の鎖- 第1章 DATA1 播野医師
播野は近頃、といってももう大分前からなのであるが、様々なクライアントに接する事にある種の限界を感じていた。彼らは日常生活において絶えず精神不安定になるといい、何もかもやる気が起きないと症状を訴えてくる。精神科医になったばかりの頃の病院勤務時代は、少しでも心に悩みを抱えている患者の苦しみを取り去ってやりたい、いや俺ならどんどん未知なる大脳の分野を研究し、たとえ今は薬を少し余分に与えてでも病んでいる人達のために尽力を尽くそうと思っていたものだが、ここ数十年前からそうした揺るぎない情熱は、徐々に薄れていった。脳の分野はどんなに研究しても未だ神秘に包まれているのが現状である。多くの新進気鋭の若手の医師らは学会に自ら得た研究成果を発表してはいるものの、それらが実際の諸々の精神病の治癒に期待できるかといえば、現実にはまだ数々の患者に応用できる段階には至っていないのである。
(学部出たばかりの若い連中はいいよ。まだまだ爾後、未知なる大脳分野に没頭できて、それが後々患者の治療にも活きてくるかもしれないんだから)
診察が始まる前、播野は最近しばしばこのような自らを精神科医として誇りに感じる事ができないような物思いに耽っていた。
“ピーーッ”
受付から呼び出し音が鳴った。
“トントン”
「はい」
「先生、おはようございます。」
「おはよう」
「……………」
「ん?何その暗い顔は。どうかしたの?」
「あっ、先生、それが……。朝いちで予約していた権藤さん。急に今日体調のほうが悪くなってキャンセルしたいっていう電話が今さっきありまして…」
受付を任されている長身で若い女だが些か顔色の良くない野尻は、播野の顔色を窺いながら、声の調子を抑えて伝えた。
「ふ~ん。…で、私に代わるようにと言わなかったのか」
「す、すいません。相手のほうが先にバッサリ切ってしまって…」
「近頃ドタキャンが多いのわかってるだろう、君も。…まぁ、仕方ないが………。後は患者の心の持ち方次第だろう。権藤さんなら心配いらないでしょう、まだ若いんだし。……それより、狩川にも伝えておけ。ドタキャンの電話が来たら、すぐ私のほうへ廻すようにと」
播野は一人一人のクライアントに接する時と同じく、砂漠のように乾ききった表情のない顔で、吐息雑じりに諦めの篭った口振りで、野尻に伝えた。
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