サイド イフェクツ-薬の鎖-
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発行者:てきーら
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ジャンル:ノンフィクション

公開開始日:2011/04/25
最終更新日:2012/09/23 14:28

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サイド イフェクツ-薬の鎖- 第4章 DATA4 決別
悩乱状態に陥っていた姉は、受話器を元に戻し、幾分安堵感の雑じった吐息を洩らすと、直ちに子供と共に離れるべき時が来たのだと自身でも悟ったのであった。美佐子は急いで家に戻り、狂乱じみた男が夜遅く戻って来ないうちに、急いで妹の家まで持っていくべき、必要な荷物だけをバッグにまとめ始めた。もうこれで苦しみは最後なんだと思って、全神経を脱出する事に傾注させたせいか、三時間もかからずにそれを終える事ができた。幼い娘にも今日から違う優しい女の人の家に行くんだよと告げた。あとは、あの人が帰って来ないうちに子供と一緒にもう一刻も早く此処を出て妹の家に向かえばいいだけであった。
「矩史、さようなら」
そう、一言だけ食卓にメモ書きを書き残すと、子供と一緒に美佐子は玄関に向かった。ちょうどその時だった。
“チリリリリ、チリリリリ…”
何か虫の知らせを思わせるような電話がなったのであった。…一瞬玄関の前に立ち止まったが、彼女はその規則的に鳴り続ける音を無視してさっさと出ていった。
「さぁ、萌々香。はぐれないでね。とりあえずコンビニに寄っていこうか」
近くのコンビニに寄って腹ごしらえのパンやおにぎりを買い、すぐそこからタクシーに乗って駅まで向かう事にした。
(大丈夫。この時間は絶対夫とは巡り会わないから)
美佐子には自信があった。ここ一、二年は事有る毎に痛憤に奔りだす男とも、恋愛していた時期から長年一緒に暮らしてきた仲なのだから。そう、昔は、ずっと前は…と、そんなふうに矩史との過去の青い追憶が蘇ってくると、急になぜかマイホームへ引き返したい気持ちに駆られた。
「ママ。ねぇ、なんで歩かないの」
と、頬に臙脂色した痣が所々にまだ残って消えないでいる娘の愛らしい顔を見ると、その遠い昔の甘い靄は一気に消えうせた。
「あっ、ごめん。行こうか、萌々香」
我に返って、そう幼い娘に言うと、彼女は再び凛とした表情で歩きだした。
(もう後ろには戻れないんだ…いや、もう戻りたくない……)
なぜか自分でもわからない、後ろめたく冷たいものが心裏の奥に残った。
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