世界の対価
世界の対価

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ジャンル:SF

公開開始日:2011/04/18
最終更新日:2011/04/18 09:45

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世界の対価 第1章 プロローグ
  望むものは何でも与えられる。
 そんな妄想や創作物の中にしかありえない理想をコンセプトにした都市が世界中で建設されていた。日本では「夢の浮雲」と名づけられた計画都市は、昨年三つ目が九州に整備されたという話だった。
 少し考えればわかることだが、「望むものが何でも与えられる」など、経済的に成立するはずはない。一言で言えば需要過多だ。あれしたい、これしたいといいたい放題の不法地帯。消費者側と生産者側の意見が対立したらどっちを優先するんだ、とか問題は目に見えて山積している。そんな場所に揚々と店舗を拡大する企業・社長は、よほど慈悲深き聖人か、我こそ英雄と自意識過過剰くらいのキチガイに相違ない。
 けれど、世の中わからないもので、次々に「浮雲」が整備されるのに、いづれも蒸発したという話は聞かない。唯一、都市伝説が多く出回っているというくらいか。
 俺は今年の夏から「浮雲」の一つに移住した。引越しではなく、移住だ。心機一転、父の栄転を期に親子三人の門出を、何の気なしに祈っていた。
 何も解っていなかった。矛盾だらけの都市で経済が回っている理由も、住居者が順調に増えている意味も。俺は何も知らず、一つ心に秘めた思いにいまだ決着つけられていなかった。
 父が消えたのは、三ヶ月後のことだった。
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