もう1度、会いたかった
第2章 別れ
土曜日になり、2人はラブホテルに入った。
「あの、亮二…これ、先に返しておくよ。」
幸樹はそう言って、亮二に1万円札を数枚差し出した。
亮二は「ありがとう」と言い、受け取ってから言った。
「…多いけど…」
「今日の分も入れてる。」
「そのことだけどさ…あのさ、幸樹…1つ聞いてもいいか?」
亮二は幸樹の手を引き、ベッドに座りながら言った。幸樹は目を見開いてから幸樹の隣に座り、こくりとうなずいた。
「幸樹…本当に正社員なのか?」
「!!」
「…だってさ…正社員で働いてて、健康保険に入っていないなんてことないじゃないか。…それに国民保険も払っていないなんて…。」
「……」
「狭心症のことだって、どうしてずっと黙ってたんだよ。」
「……」
幸樹は黙っている。亮二が続けた。
「俺…あれから考えたんだけどさ…。もう会ってもらうのやめようと思って…」
「!?」
幸樹が驚いて顔を上げた。
「だって…狭心症ってわかってしまったら、ベッドの上でもう思う存分、お前を愛せないし…それに…幸樹が正社員じゃないんなら、金もらう資格ないしな。…今まで疑問も持たずにもらってたけど…今までのお金全部返すからさ…、それでもう会うのやめよう。」
その亮二の言葉に、幸樹はしばらく言葉もなく唇を震わせていた。…そして、つらそうにうつむいた。
「…わかった…。でも…お金は返してくれなくていい…。」
「いや、それはだめだ。」
「いいんだ!」
幸樹が声を上げた。
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