蒼い月、蒼い空
第1章 プロローグ
〈熱〉
「コイツはな…マゾなんだゼ。それが証拠に 何度も何度も、自殺未遂さ。見ろよ、このキズ!
死にたくなんかないのサ。端(はな)からな。
構って弄(いじ)って欲しくて堪らないのさ」
ぼくをユーマの方に向かせて、無理矢理立たせた。
二宮が言う。
そして……
手にしていたナイフでぼくのTシャツの前部分を裂いた。
鋭く研いだ切っ先が、
皮膚に薄く線を描く。
「…ッ!…」
「痛いか…?」
くくくっ と二宮が 笑う。
「楽しいンだろ?…感じるダロ?…」
両腕を後ろ手に捕らえられて身動きが出来ない。
“構って欲しかった”…?
わからない…
自分の事なのに。
ぼくは、
そんなワガママで
自分を傷つけてきたの…?
そうなのかな…
ぼくは、
傷つけられるのが
スキ…?
その時、胸に鋭い痛みを覚えて、意識が現実に戻る。
左の胸、乳首辺りに
キリッと熱を感じた…
二宮のナイフの刃が
ぼくの薄い皮膚を破り、
すーと、
赤い血液が
滴り落ちた。
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