蒼い月、蒼い空
第1章 プロローグ
〈悪戯〉
夏休みの海の家は、家族連れやカップル等で大賑わい。
まだ気温の低い早朝から徐々に人が増え始める。
太一とセナの小5コンビも常連だ。
毎日やって来るだけあって、暗闇では判別がつかないのでは…というくらい、二人とも全身真っ黒に日焼けしている。
二人の目的は海で泳ぐ事。以外に…
「カーケールちゃん!」
朝イチで 熱い鉄板相手に焼きそば作りの練習をしていたカケルの背後から声をかける。
二人同時に。
はっと気づいた瞬間、エプロンヒモの結びを解かれる。
「あっ!」
そうなのだ。
二人の目的はこの頃入った“新人”をからかう事。
もはや〈仕事〉なのでは、という位 熱心に通って来る。
エプロンのヒモはまだカワイイもので…。
「カケル~、そんな怒んなよ。美人が台無しダゼ!」
と、セナが言ったかと思うと、
「カケル~、尻見して~!」
サッと背後に舞い戻った太一が カケルの短パンをずり下げる…。
「ぅあっ!〇△×★□…!!」
叱られる前にアカンベーをして笑いながら走り去る…
「…たく…」
思わずため息を吐く。
「今朝の儀式も滞りなく済んだな」
笑いながらユーマが調理用食材を運び込む。
「儀式って…。こっちの身にもなってほしい…」
毎度の事とはいえ、ガキんちょに付き合わされながら仕事するのは結構キツイ。
情けないけど
涙、出そうになる。
「ここの生活にもずい分慣れていい事さ…」
ユーマが笑った。
ぼくは、
それを見て チクンと
胸の辺りが痛くなる。
変だな、ぼくは。
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