歴史エッセイ集「今昔玉手箱3(東洋文明編)」
歴史エッセイ集「今昔玉手箱3(東洋文明編)」
アフィリエイトOK
発行者:オフィス亀松亭
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:未設定
シリーズ:今昔玉手箱

公開開始日:2011/03/25
最終更新日:2011/03/25 12:27

オーナーサイトへ
アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
歴史エッセイ集「今昔玉手箱3(東洋文明編)」 第2章 東方精神の章(仏・密・禅)
 顔真卿の「祭姪文稿(さいてつ
ぶんこう)」とは、戦死した甥の
首桶(霊)に対して奉げられた祭文
の草稿である。その無念さ、悲しみ、
怒り、嘆きなどの情念を、いったん
腹中の丹田に収め、筆先からどっと
溢れさせたような書体。唐に渡って
この書と出会った空海は、「これは
すごいぞ」と魅せられたのだった。

 風信帖の書体は、王義之の美学を
ふまえつつ、顔真卿の野性味を
ミックスさせている。書は人なり
とよく言うが、長年山岳修行で
天地自然の気を練り、民衆の中に
あってその嘆きや悲しみを骨身に
しみて知っている空海には、顔真卿
の情念がよく理解出来たに違いない。

 風信帖は空海が唐から帰国し、
最澄と交流し始めた812年頃に
書かれた手紙であるという。それに
しても同時代を生きた宗教界の
リーダーとして、最澄と空海ほど
対照的な僧も珍しい。最澄は空海
より7歳年長で、桓武天皇の師
だった。僧としてこれ以上の地位
は望めないスーパーエリート。
対する空海は18歳で大学を中退し、
優婆塞(うばそく)という政府非公認
の僧にドロップアウトしてしまう。

 この2人が同じ密教を求めて、
同じ遣唐使船団に乗り込むのだから
面白い。とは言え最澄は、通訳1人
を従えた国費留学僧。空海は無名の
私費留学なのである。だがそれは、
現世的な移ろいやすい身分制度の
枠内での事であり、密教的真実と
いう、ある種神秘的な霊的宇宙に
おける空海と最澄の立場は全て逆
だった。
85
最初 前へ 82838485868788 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ