歴史エッセイ集「今昔玉手箱3(東洋文明編)」
第2章 東方精神の章(仏・密・禅)
○龍樹
ローマ帝国5賢帝の時代、南
インドに第2の仏陀と称賛された
僧がいた。ナーガルジュナ。漢訳
名・龍樹。般若経の基礎である空
の思想を説いて大乗仏教を確立
させた人物である。
南インドはアーンドラ朝の時代。
若き龍樹は3人の悪友と共に隠行
の法という姿が見えなくなる秘法
を用いて、後宮(ハーレム)に忍び
込み、美女を手当たり次第に犯し
て回った。ところが自然の摂理に
よって、2~3ヶ月もすると美女
たちが揃って妊娠。身に覚えの
ない王は激怒して犯人探しに乗り
出した。悪友3人は捕らえられて
殺され、王の後ろに隠れた龍樹
だけが助かった。
「やはり愛欲は苦の原因で
あったか 」
と龍樹は出家を決意する。幼い頃
からバラモン経典を暗記して理解
していた下地があったので、小乗
の経典は90日で読破した。ヒマ
ラヤでは老比丘から般若経を授け
られ、その後インド中を遍歴。
マハーナーガ(大龍菩薩)から華厳
経を授けられ、その深い意味を
悟った。龍樹が空の思想を著した
「中論」は、鳩摩羅什(くまら
じゅう)によって中国に伝わり、
シャーンタラクシタによって
チベットへと伝えられた。
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