歴史エッセイ集「今昔玉手箱3(東洋文明編)」
第2章 東方精神の章(仏・密・禅)
荒川は「意味のメカニズム」
によって作品様式を確立する
以前から、「養老天命反転地」
のような構想を抱いていたと
いう。荒川が養老町の現場に
立った時、「地の霊気」を
感じたと語った。
荒川は建築物を、「人間
存在の意味を根本から問い
直す場」だと説明している。
荒川は「人間の五感、身体
の全てが知覚なのだ」と
いう持論を語る。建築物は
全て、実験心理学や生態学
の理論を駆使し、色彩や
配列の全てを計算し尽く
して設計してあるという。
作品を「体験」して五感
を揺さぶり、直観力を揺さ
ぶり、場の体験を蓄積する
事によって「宿命を反転
させる場」なのだそうだ。
宿命には「死」も含まれる。
死の宿命を反転させる「場」。
癒しと、人間救済の「場」。
ヒロシマやアウシュビッツ
の反転。荒川修作とマド
リン・ギンズの精神は、
来るべき文明を見据え、
その文明の基盤に立って
いる。果たして21世紀は、
戦争と分裂の20世紀文明
を反転させられるだろうか。
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