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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/22
最終更新日:2011/03/27 02:33

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- Garden - 第2章 第二章  ‐ 園 ‐
「軍部中将であられる雅様ですか」

藤の君の後ろ姿が遠くに消えてしまうと、私の背に静かな声が響いた。
振り返るとそこにいたのは、藤の君より少しばかり年上の美しい女が立っている。
薄い緑の衣が風に揺れるとまるで柳のように感じられた。

「そうですが」
「藤の方に惹かれておいでなのでしょう?」
冷たい目とうっすらと微笑む口元が何かを言いたがっているのは分かった。
「惹かれない男などいないのではないかな」
冗談ぽく笑って返しても、その眼は笑わない。
「なればお手を伸ばしてみてはいかがでしょう」
微笑んでいるのにひどく冷たいそれは、藤の君の面影を感じるのに、全く違う。
美しいけれど、恐ろしい笑みだった。

姫に手を出せ。

女はそういった。
姫である藤の君に手をつけること、それはつまり色のものに手を出すということ。
それがどれほど大罪であるか、その女の目は知っていて私を見つめている。
「こんなことまでして、御簾の向こうにしか見たことのない男の妻になりたいですか」
女の目は怯えることもせず、ただ遠くへ向けられた。それは今を映すことをやめた者の目だった。
「貴女は四宮の、・・・藤の君の姉であられるのに。妹より、姫になることが大切ですか?」
彼女は藤の君より2つだけ歳のはなれた姉、柳の君。
四宮の姫宮希望者の1人だったが、藤の君に姫を奪われた人。

柳の君は否定もせず、一礼するとそのまま去って行った。
柊と笠冴は遠すぎず近すぎない場所で私を見ているのだろう。
その2人の耳に、いや、他の誰の耳にも今の言葉達が聞こえてなければいいと思った。
何よりも、藤の君には絶対に聞かれてはならないと。
そんなことを考えながら、藤の君に似ているのにまったく違う目を持つ柳の方の目を頭の端から追いやろうとするが上手くいかない。
己に負けず宮で生きていくのはきっと、藤の君が口にした言葉よりさらに厳しい世界なのであろう。

夏の迫る日、風に揺れる御簾の間から、見てはならぬ花園を見た気がした。
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