歴史エッセイ集「今昔玉手箱」
第2章 幻の章(おとぎ話や妖怪の事など)
魔という概念は、ギリシャ語で
中傷者・密告者を意味する「ダボ
ロス」から派生したものだと言わ
れている。古代インドのサンス
クリット語では「マーラ」。修行
を妨げる悪霊の事で、仏陀を色
仕掛けで悩殺しようとした
お姉さんたちも「魔界」の住人
という事になる。
キリスト教世界の「魔」は
「デーヴィル」。ヘブル語で
敵対者を意味するサタンと呼ば
れたり、悪魔(神を凌ごうとする
過信者の親玉)ベエルゼブル、
あるいはルシフェルなど、異端者
として地獄に落とされた者たち
が住む世界である。
日本語の「霊」とは、死んだ
人々の魂の事を指す。生前、
ただならぬ怨みを抱いたまま
死ぬと、その魂は「怨霊(おん
りょう)」となる。
「魂魄(こんぱく)この世に
とどまりて、怨み晴らさで
おくべきや」
と、生前自らをいじめた怨みの
対象者を、呪い殺そうとする、
あの世とこの世の間をさまよう
世界の住人である。
ちなみに「魂」とは、天に帰る
べき陽の魂で、「はく魄」とは
地に帰るべき陰なる魂の事である。
そして、天皇や公家貴族、武将や
文人など、身分制度で上級と
される者の魂魄を「みたま」と
尊称し、「御霊(ごりょう)」と
して祀ったのである。
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