今昔医療福祉外伝
第11章 ホスピス(下) /痛みを知る
ところで、現在ホスピスを中心とする
医療現場で使用されているモルヒネだが、
錠剤と粉末の二種類がある。粉末の塩酸
モルヒネは効果が4時間。苦いので水に
溶き、シロップやワインで味をつけて
飲む。この「プロンプトン・カクテル」
は、ハチミツやレモン水、お酒など、
何でもよいのが特徴。自分の好みに
応じてよい。
錠剤の硫酸モルヒネ徐放錠は、効果が
12時間。一日二回の服用。スイスで開発
され、世界30ヶ国で承認・市販されて
いる。この薬は日本での商品名「MS
コンチン」。シオノギ製薬から流通して
いる。1988(昭和63)年に厚生省から
承認され、翌年から市販された。
モルヒネ使用に対する医師の誤解の
一つに、「副作用は避けられない」と
いうものがある。確かに全能の、副作用
の全く無い薬は存在しないかもしれない。
しかし副作用対策を十分に行えば、副作用
の為に投与を中止しなければならなかった
臨床例は稀にしかない。
便秘には、酸化マグネシウムを第一選択
として用いる。悪心・嘔吐には、制吐剤
プロルペラジンを、眠気にはメチルフェニト
を用いる。モルヒネによる混乱・幻覚は、
1~2パーセントと稀な副作用だが、使用量
の減少から中止へ。中止後の混乱には、
向精神薬のハロペリドールを第一選択とする。
(WHO方式・経口モルヒネ長期反復投与時
の副作用対策のコツ・大阪淀川キリスト教
病院ホスピス・恒藤暁 )
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