今昔医療福祉外伝
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発行者:オフィス亀松亭
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ジャンル:ノンフィクション
シリーズ:今昔玉手箱

公開開始日:2011/03/02
最終更新日:2011/03/02 11:02

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今昔医療福祉外伝 第11章 ホスピス(下) /痛みを知る
 がんは激しい痛みを伴う。歯痛を
体験した人は多いだろう。ズキズキ
する痛みの為、何も手につかなかった
事はなかっただろうか。そしてそんな
時に考えた事と言えば、何でもいいから
一刻も早く痛みを取り除く事ではなかった
なかっただろうか。

 末期がん患者の70パーセントは、
主症状として「痛み」を体験する事に
なる。がんには「デアフェレーション・
ペイン」と言って、神経そのものが
がんに侵されるという、想像を絶する
痛みもある。しかもがんの痛みは、
歯痛の比ではない。

 末期がんのケア(心の癒しを含む看護・
介護)で「クオリティ・オブ・ライフ
(生命と生活の質を高める事)」を実現
する為には、まず患者自身の身体の痛み
を取り除かなければならない。

 1986年、WHO(世界保健機関)は、
すべてのがん患者を「20世紀中に
痛みから解放するための宣言」を発表
した。がんの痛みをなくす為の、具体的
な方法論である。

 第一段階。痛みが軽い場合は、アス
ピリンやアミノフェンなどの鎮痛薬を
用いる。それでも痛みを緩和出来ない
場合、第二段階として弱アヘン系
コディンという鎮痛薬に切り替える。
それでも駄目な場合は、第三段階と
して「モルヒネ」が登場する。

 この三段階疼痛対策を、「WHO
方式」と呼ぶ。これは全世界の末期
がん患者に対して実施され、十分な
効果をあげている。これを受けて
厚生省(現・厚生労働省)と日本医師会
は、「がん末期医療に関するケアの
マニュアル」を発表した。しかし
一部の病院やホスピスで成果をあげた
他は、一般的治療法として定着するまで
には至らなかった。

 末期ケアは、一部の医療現場で真剣
に論じられてはいたが、患者にこれと
いった治療をほどこさない「末期ケア」
のあり方に、反発する医師も多数存在
した。一分でも一秒でも生命を長く
維持するのが医師としての務めで
あり、その放棄は敗北であると。まして
モルヒネは麻薬だから、投与するなど
とは言語道断というわけである。患者
や家族サイドにも、「モルヒネを使えば
あと一日か二日の命だ」という誤解を
生む土壌があった。

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