今昔医療福祉外伝
第10章 ホスピス(上) /ホスピスの成り立ち
「誠にまことに汝らに告ぐ。一粒の麦、
地に落ちて死なずば、唯一つにてあら
ん。もし死なば、多くの実を結ぶべし。
(ヨハネ伝第12章24節)」
という聖書の言葉が、日野原の死生観の
原点になった。ピースハウス・ホスピス
の石碑には、旧約聖書詩篇56「いのち
の光のうちで」という文字が刻まれて
いる。
1994(平成6)年3月。仙台市の
社会福祉法人「ありのまま舎」は、全国
初の難病者ホスピス「太白ありのまま舎」
を完成させた。自らが筋ジストロフィー
患者でもある、常務理事・山田富也の
長年の夢だった。完成を夢見ながら
亡くなっていった人々も多い。
難病と言っても多種多様だが、
筋ジストロフィー・脳性麻痺・脊髄損傷・
抗原病などが主なものである。総工費
10億円。定員60名、全室個室。
医師1名、看護婦3名、寮母30名、
チャプレン1名をメインスタッフとし、
ボランティアと共にケアにあたる。
施設は、自然の光をふんだんに取り
入れた設計になっている。仙台市西部の
緑に囲まれた環境の中にあり、
キリスト教精神を基本としている。
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