今昔医療福祉外伝
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ジャンル:ノンフィクション
シリーズ:今昔玉手箱

公開開始日:2011/03/02
最終更新日:2011/03/02 11:02

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今昔医療福祉外伝 第4章 福祉僧・忍性(にんしょう)伝
 29歳の叡尊は、旅の途上でこの光景
に遭遇した。野ざらしの死体が累々と
横たわり、腐臭が満ちて息苦しかった。
骨と皮ばかりの人間が、地面を這って虫
を探していた。エリートでもある僧は、
粗食であっても餓えるという事はまず
ない。叡尊に向けられる、妬みと羨望の
視線。彼はおのれの無力さを恥じ、身も
心もずたずたに切り刻まれるような苦悩
を味わった。旅の僧に出来る事と言えば、
死者の霊にねんごろな経文を手向ける事
ぐらいだった。この絶望的な状況下で、
餓えた人々の口から唱えられていた言葉
がある。「南無阿弥陀仏」。親鸞による
浄土真宗(一向宗)である。

 叡尊は忍性に対し、徹底して「生命
における平等」を説いた。

「よいか。非人と呼ばれる者たちは、
文殊菩薩の化身だと思い、接するが
よい。」

当時「非人」という言葉は、乞食を
はじめ、ハンセン病や天然痘の患者、
身体障害者などの人々に、幅広く用い
られていた。叡尊は、文殊経に説かれ
ている「利他」の思想を菩薩行の理想
として、不当に差別されている「非人
救済」を自らも実践し、弟子たちにも
教えていたのである。

 聖徳太子の頃から、僧は仏教者・
教育者であると同時に医者でもあった。
薬草に関する知識は必須科目だった。
唐招提寺開山の鑑真和上が医学・
本草学について口述した「鑑上秘方」
や、丹波康頼(たんばやすより・
911~995)が中国医学を集大成
した「医心方(いしんぼう)」などの
テキストが存在した。
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