虹の橋を渡ったゾウ
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ジャンル:ノンフィクション

公開開始日:2011/03/01
最終更新日:2011/03/01 10:29

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虹の橋を渡ったゾウ 第2章 印度象鎮魂歌(下) 無念の涙
 井下の手紙の回答はすぐに届いた。
仙台からは、象を譲り受けたいとの
回答。名古屋からは市長と相談の上
との事だった。名古屋は曖昧だが、
仙台は吉報と言えた。事実8月23日
に、仙台市動物園の石井是順技師が
福田を訪問し、象の運搬に関する
具体的な打ち合わせや費用の問題を
話し合った。仙台では、豹のオスも
必要という事だった。

 福田は早速、田端駅貨物係の佐藤
定吉主任を訪ねた。象の輸送費用は
180円。夕方出発すれば、翌日正午
までには仙台に到着出来るとの事
だった。福田は一筋の光明を見出した
思いだった。

 福田はその足で上野警察署へ行き、
万全の段取りを整えたうえで都庁の
井下を訪ねた。あとは井下が大達長官
の了解をとりつければ、象の命は
助かるまでになった。

 福田は動物園に戻って、井下からの
電話を待った。夕方、電話が鳴った。

「だめだったよ。」
井下が力なく言った。
「仙台で象に何かあったら責任問題に
なると。命令を曲げて独断で事を行う
とは何事かと、こっぴどくやられたよ。」

「責任問題・・・」
 福田はそう言って絶句した。やり場
のない怒りが湧いた。無念であった。
福田や井下の思いは、戦争や官僚組織
という、人格を持たず融通の効かない
システムの中で押し潰された。全ての
努力は水泡に帰し、わずかな望みも完全
に絶たれたのだった。
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