虹の橋を渡ったゾウ
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ジャンル:ノンフィクション

公開開始日:2011/03/01
最終更新日:2011/03/01 10:29

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虹の橋を渡ったゾウ 第1章 印度象鎮魂歌(上) 動物処分命令
 福田は都庁へ向かう道すがら、せめて
肉食獣以外の動物を救う事を考えていた。
疎開という方法があった。名古屋・
仙台などの地方動物園に象などを疎開
させるのだ。福田は1頭でも多くの
動物を救う為に、知恵のありったけを
絞り出そうとしていた。

 上野動物園には、象が3頭いた。
インド象のオス「ジョン」と、メスの
「トンキー」「ワンリー」である。
ジョンは1924(大正13)年10月
に購入された。当時からやや狂暴だった
が、都制に移行した7月頃から暴れ方が
ひどくなっていた。それはまるで、自ら
の死期を予感しての行動だったのかも
しれない。

 ジョンは前足を短い鎖で繋がれていた。
井下と福田は、自主的にジョンを殺す事
にした。銃殺は付近の住民に不安を
与える事から、毒殺の方法がとられた。
しかしジョンは、毒入りのじゃがいもを
より分けて食べた。やむなく絶食による
「餓死」という方法をとらざるをえなく
なった。

 井下は福田に、「一ヶ月以内に毒殺」
という大達の命令を伝えた。覚悟して
いたとはいえ、無念だった。

「戦争なのだ。」
福田はそう言い聞かせ、涙をこらえながら
都庁を後にした。

 上野動物園に戻った福田には、つらい
園内巡視が待っていた。正面ゲートを
歩くと程なく、ペンギン池がある。蒸し
暑い夏の午後だったが、ペンギンたち
は涼しそうに泳いでいた。いつもと
変わらぬのどかさだった。孔雀舎・
鳩舎・馬舎を過ぎると、その先に
猛獣舎があった。虎・熊・ヒョウ
などの猛獣たちは、福田の足音や匂い
を覚えていて、親愛の情をこめてすり
よってきた。福田は動物たちと目が合う
と、さっと視線をそらした。罪悪感で
いっぱいだった。
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