虹の橋を渡ったゾウ
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発行者:オフィス亀松亭
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ジャンル:ノンフィクション

公開開始日:2011/03/01
最終更新日:2011/03/01 10:29

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虹の橋を渡ったゾウ 第2章 印度象鎮魂歌(下) 無念の涙
 「福田さん、何もあなた1人の責任
じゃない。皆苦しんでいる。私も力が
足りなかった。」

井下は日毎に痩せていく福田を、事ある
ごとになぐさめていた。福田はいつも、
黙ったまま力なく笑うだけだった。

「あいつらの事、私は生涯忘れない。
苦しみ抜いたあいつらの姿を、この目
に焼き付けて生涯背負っていくつもり
です。」

福田は何度も何度も、同じ事を言って
泣いていた。

 トンキーとワンジーは、空腹に耐え
ながら生きていた。法要の日まで、
福田は少しずつそっと餌を与えていた。
トンキーは福田や菅谷の姿を見ると、
鼻を高く持ち上げて前足を折った。
トンキー得意の「芸」だった。芸を
すれば餌がもらえるという思いが
あったのだろう。トンキーは福田の
一挙手一投足を見続けた。哀願する
ような目だった。

 9月11日、ワンリーが死んだ。
絶食から17日目だった。トンキーは
それより12日あまりも生き続け、
9月23日午前2時42分、餓死した。

「来たる世は 人に生まれよ 秋の風 」
福田は、送られてきた短冊の一首を、
何度となく口にしていた。
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