虹の橋を渡ったゾウ
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ジャンル:ノンフィクション

公開開始日:2011/03/01
最終更新日:2011/03/01 10:29

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虹の橋を渡ったゾウ 第2章 印度象鎮魂歌(下) 無念の涙
 福田は象舎の中に入っていった。
飼育係の菅谷吉一郎と渋谷信吉が
ジョンを見ていた。

「やせたなあ・・・」
福田がぽつんとつぶやいた。

「がんばるなあ、ジョン・・」

ジョンはむうらめしそうな、哀しげ
な目を福田に向けた。

「おまえ人間のこと、身勝手なやつら
だと恨んでいるだろうなあ・・・」

 ジョンが長い鼻を左右に振った。

「許してくれよなあ、ジョン。インド
のジャングルなら、あと20年は生き
られたのになあ・・・」

ジョンの目は澄んでいた。優しい目で
福田を見た。絶食が始まってから17日
目だった。ジョンは骨と皮ばかりの姿で
立っていた。ふっと、ジョンの鼻が高々
と持ち上がった。遠吠えのような声が
細く長く象舎に響いた。

「ジョン・・・」

福田・菅谷・渋谷が、ほとんど同時に
叫んでいた。ジョンは鳴き終わると、
ドサッと床に崩れ落ちた。午後6時
30分、ジョンは息絶えた。隣の象舎
で、メスのトンキーとワンリーが鳴いて
いた。哀しい響きの鳴き声だった。

 トンキーとワンジーは、大達長官に
よる疎開拒否の翌々日、8月25日
から絶食が始まっていた。トンキーは
1924(大正13)年10月にジョン
と共に購入されたメスの象である。
よく芸をして見せる、子供たちの
人気者だった。おとなしく優しい性格
だった。
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