原爆
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公開開始日:2011/02/28
最終更新日:2011/02/28 10:54

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原爆 第5章 5・命の水
 爆心から南に3・5キロ離れた広島地方
気象台でも、衝撃波で壁に窓ガラスが突き
刺さった。このように数多くの人々の肌に、
大小無数のガラス片が突き刺さった。
また、ガンマ線1万3千ラド、中性子線
1万4千ラド、という放射線が人々を
貫いた。人々は放射線病に襲われた。
歯茎や鼻・毛穴からじわじわと血が滲み、
髪の毛や眉毛がごそっと抜け落ちた。
白血球やリンパ球が急激に減少した。
高熱にうなされ、震えるほど寒くなり、
黒い血を吐いた。苦しんだ後に死が
待っていた。彼らの全身には、紫色の
斑点が浮かんでいた。

 人体や建物を粉にした、膨大な量の炭素
の塵は、きのこ雲となって高度1万4千
メートルにまで達した。雲には約200
種類の放射性物質が混在していた。塵は
大気中の水蒸気を集めて、巨大な雨雲に
発達。午前9時頃から約1時間、滝の
ような雨が爆心地北西部に降り注いだ。
「黒い雨」である。水を求めて喉の乾き
を訴えていた人々は、その雨を飲んだ。
30度あった気温が急激に下がり、
ぞくぞく震えるほどの寒さになった。

 一方、原爆投下20分後には、市内
の各所で火柱が上がり始めた。炎が炎
を呼び、炎の竜巻となって吹き荒れた。
遺体の上にも、まだ生きている人にも炎
は襲いかかった。その肉体は、青い炎を
出して燃えていた。街中の空気は、ドロ
ドロと茶色っぽく淀んでいた。

 誰もが水を求めていた。防火用水の
中には、必ず死体があった。血の色と
混じって、赤黒くドロッとしていた。
大田川・天満川・元安川・本川・京橋川・
猿股川。水を求め、火災を逃れて、人々
は川に飛び込んだ。この年の梅雨は長く、
大田川が氾濫するなど川の水量は
多かった。水は黒く濁っていた。
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