原爆
第4章 4・広島
膨張したファイアーボールは、40
万度の熱線、大量のガンマ線、秒速50
0メートルの衝撃波を同心円状に放射
して、約10秒間輝いた。この間の地面
の温度は、3千から4千度に達したと
考えられている。ファイアーボール内に
いた人間の肉体は、瞬間的に燃え尽き、
蒸発した。おそらく本人は、死んだ事
すら気づかなかったに違いない。この
一瞬で蒸発してしまった死者は、推定で
2万1千人と言われている。
高熱の衝撃波は、産業奨励館屋根の
銅板を熔かし、「死の同心円」を描きな
がら周辺に広がっていった。爆心地
(グランド・ゼロ)から1500メートル
南の山中高等女学校では、校庭で朝礼が
行われていた。生徒の身体は宙に舞い
上がり、地面に叩きつけられた。同時
に肌が焼け、おさげ髪に火がついた。
学校の建物は崩壊し、鉄骨がねじ
曲がった。50人中12人が即死した。
広島市に地獄が出現した。
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