原爆
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公開開始日:2011/02/28
最終更新日:2011/02/28 10:54

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原爆 第4章 4・広島
 この朝は快晴。抜けるような青空が
広がっていた。7月16日、硫黄島
南方海上で発生した台風8号は、
ゆっくりとした速度で西に進み、8月
1日に沖縄から上海東方海上に抜けた。
その後北北西に進路を変え、8月3日
に朝鮮半島の北部に上陸した。台風の
影響で、西日本一帯は8月4日まで、
雨や曇りのぐずついた天気が続いたが、
5日頃から太平洋高気圧が日本列島を
すっぽりとおおった。6日の朝は全国的
によく晴れた、夏の暑い一日が始まろう
としていた。

 午前6時30分、リトルボーイに
「赤プラグ」が挿入された。投下すれば
爆発する状態である。

 午前7時09分、広島県に警戒警報
発令。警戒警報は、天気予報で言えば
「注意報」にあたる。広島市民は
「定期便」と呼んでいた。昨夜も2度
の空襲警報が出され、何事もなかった。
市民にあまり緊迫感はなかった。この時
すでに、義勇隊や学徒動員、女子勤労
奉仕隊などが各所で、建物の強制疎開
作業を始めていた。

 空を見上げると、日ざしはきつかった。

「なして京都と広島だけが無傷なんじゃ
ろのう?」

「きれいな街じゃけん、敵さん、別荘
でも建てるつもりなんじゃろ。」
広島市民は、そんなうわさ話をささやき
あっていた。

 警戒警報の主は、イーザリー少佐が
機長の気象観測機、B29「ストレート
フラッシュ号」だった。午前7時30分、
エノラ ゲイに入電。

「Y3─Q3─B2─C1」

暗号電文はチベッツ機長が翻訳した。

「広島上空、低中高とも雲量10分の
3以下。第一目標を爆撃せよ。」

 続いてウィルソン少佐の「ジャビット
三世号」、テイラー少佐の「フルハウス
号」から入電。
「小倉・下関方面、9千メートル上空
まで快晴。」
「長崎上空、わずかに雲あり。されど
天候に問題なし。」

チベッツ機長は搭乗員全員に告げた。

「広島だ。」
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