原爆
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公開開始日:2011/02/28
最終更新日:2011/02/28 10:54

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原爆 第3章 3・エノラ ゲイ
 また命令する者たちは、彼らの純粋な
愛国心を巧みに利用する。仮に彼らの
1人が、これから行う行為の恐ろしさに
気がついて反乱を起こしたとしても、
代わりの誰かがやる。自らは冷笑され、
軍法会議にかけられてアラスカ送りに
なるのがオチだろう。しょせん彼らは、
人格無きシステムの中での、使い捨て
の部品にすぎない。「悪魔に魂を売った
男」と名指しされるのは、彼ら12人
の搭乗員などではなく、一握りの戦争の
親玉たちだろう。周囲の反対を押し
切って原爆投下を決断したトルーマン
大統領と、スティムソン陸軍長官ら軍
首脳部こそが、ヒトラーとナチスと同じ
「虐殺王」と呼ぶにふさわしいだろう。

 硬質な鉄と機械の胴体の中で、彼らの
戦争心理を推察する手がかりがある。
空戦200回以上、日中戦争と大東亜戦争
を、零戦のパイロットとして終戦まで戦い
抜いた、日本海軍航空隊のエース(撃墜王)
坂井三郎は、著書「坂井三郎空戦記録
(講談社刊)」の中で次のように記している。

 彼がパイロットになって間もない昭和
13年、日中戦争の南昌攻撃に際し、
飛行場近くで中国人を機銃掃射し、後に
彼らの死体を発見した時の事である。

「私は今までの数回の戦闘で、幾度か敵機
を撃った。また敵を攻撃した。燃えさかる
敵愾心で攻撃した。しかしその場合、
いつも攻撃の相手は「敵機」であり「敵兵」
であって、そこに「人間」を意識した事は
なかった。今こうして、私に撃たれて死んで
いる「人間」を見ると、麻酔から醒めた時の
痛みのように、心がうずくのである。私は
1人で黙々とそこへ穴を掘り、静かに二個
の死体を埋めて黙祷した。」

 この時坂井は22歳。彼は続けて語る。

「私はまだ、戦争に慣れていなかったのだ」


22
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