原爆
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公開開始日:2011/02/28
最終更新日:2011/02/28 10:54

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原爆 第3章 3・エノラ ゲイ
 エノラ ゲイ機長・ポール・チベッツ
大佐は、1915年生まれで当時30歳。
ヨーロッパ戦線では、B17爆撃機の
パイロットだった。彼のポケットには、
12本のカプセルが入っていた。致死量
の青酸である。もし作戦に失敗して捕虜
になった場合、彼らには2通りの選択が
出来た。ピストル自殺か服毒自殺である。
日本の軍隊の場合、「戦陣訓」が徹底的
に教育されていた。「生えて虜囚の辱め
をうけず。死して罪禍の汚名を残すこと
なかれ」として、捕虜よりは自殺を選択
した。しかし人命を重んじるアメリカ軍
のやり方としては、「青酸カプセル」は
異例の事だった。

 副機長・ロバート・ルイス大尉は、
当時26歳。爆撃手・トーマス・フィレ
ビー少佐は「無口な爆撃専門家」と
呼ばれ、原爆投下のボタンを押した男
である。レーダー技師・ジョー・
スティボリック中尉。航法士(ナビ
ゲーター)・セオドア・ヴァンカーク中尉。
整備員・ドゥゼンバリー軍曹。機尾銃座射手・
ジョージ・キャロン軍曹。モルモン教徒の
電子テスト係・モリス・ジョップリン中尉。
彼は放射能に関する科学知識を持っていた、
数少ない男である。兵器係は海軍のパーソンズ
大佐。副機関士兼副射手・ロバート・シュー
マード軍曹。

 彼らはいずれも、全米陸軍航空隊から
慎重に選び抜かれた下士官以上の将校
たちで、戦闘のプロフェッショナルたち
である。年齢は25歳から30歳で、命令
を忠実に実行する、愛国心にあふれた軍人
だった。彼らは、祖国の同胞たちを救う為
に、必殺の武器を抱えて飛ぶ「騎兵隊」の
ような英雄的行動であると固く信じていた。
事実搭乗員たちは、離陸前に映画班や
写真班の照明を浴びた「スター」であり
「ヒーロー」だった。騎兵隊は常に正義で
あり、インディアンは悪そのものだった。

 軍隊という、命令によって動く組織に
あっては、彼らに自由意志は存在しない。
彼らは、命令し判断・決断する者たちの
意志の反映であり、「道具」にすぎない。
彼らがいかに信仰心厚いキリスト教徒・
ユダヤ教徒・モルモン教徒であったと
しても、それらの個性は無視され、
エノラ ゲイの搭乗員として抽象化
出来た。
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